持分会社の資本金、資本剰余金、利益剰余金

持分会社の資本金、資本剰余金、利益剰余金

設立時の資本金の額、資本剰余金、利益剰余金

持分会社の設立(新設合併及び新設分割による設立除く)時の資本金の額は、設立時の社員が設立により出資を履行した払込み、または給付した財産の価額から設立に要した費用のうち設立時の社員が資本金又は資本剰余金とすべきでないとした金額を控除した額の範囲内で、社員が定めた額(必ずゼロ以上の額)とされています。(会社計算規則44条1項)

また、設立時の資本剰余金は自由に決めることができ、出資の額から資本金の額を控除した額とされ、利益剰余金はゼロ(設立費用が出資額を超える場合は当該超えた金額)になります。(会社計算規則44条2項)

すなわち、例えば合名会社で3人でそれぞれが100万円ずつ出資し、設立費用が50万円かかり、この金額を資本金や資本剰余金とすべきでないとした場合、MAXで250万円(100万円×3人-50万円)を資本金とすることができます。

この場合で、資本金を150万円とした場合は、資本剰余金が100万円(250万円-100万円)となり、利益剰余金はゼロとなります。

設立費用が350万円で、出資額を超えた場合は、設立時の資本金および資本剰余金はゼロとなり、利益剰余金がマイナス50万円となります。

なお、合同会社の資本金は登記事項とされていますが、合名会社、合資会社においては資本金は登記事項とされていません。

これは、合名会社、合資会社に無限責任社員が存在し、これらの社員は会社の設立までに出資の履行が義務図けられておらず、資本金は計算上の数字にすぎないためです。

* 持分会社のうち資本金が登記事項とされているのは合同会社だけで、合名会社、合資会社においては資本金は登記事項とされていません。

スポンサーリンク


資本金の増加

資本金が増加する場合

持分会社の資本金が増加する場合として、会社計算規則30条1項に以下の3つのパターンが挙げられています(吸収合併、吸収分割及び株式交換による場合を除く)。

①社員が持分会社に出資した場合
②持分会社が社員に出資の履行を請求することができる権利を資産計上した場合
③資本剰余金の全部または一部を資本金とするとした場合

①、②は既存社員の出資だけでなく、新たに社員となるものが加入する場合も含まれます。持分会社で新たに社員が加入した場合は、当該社員が無限責任社員で労務や信用を出資としない限り、資本金は増加します。

増加する資本金額

増加する資本金額は、
①の場合は、払込み又は給付財産から出資を受けるために要した費用のうち資本金又は資本剰余金から減額すべきとした額を控除した金額の範囲内
②の場合は、資産計上した権利の額の範囲内
③の場合は、資本金に振り替える資本剰余金の額
となります。(会社計算規則30条1項)

資本金の減少

資本金が減少する場合

持分会社の資本金が減少する場合には下記のものがあります。(会社計算規則30条2項)

持分会社が退社する社員に対して持分の払戻しをする場合
持分会社が社員に対して出資の払戻しをする場合
③持分会社(合同会社を除く)が資産計上している出資者に対する出資の履行請求債権を資産計上しないこととした場合
④持分会社(合同会社を除く)が資本金の全部又は一部を資本剰余金とすると定めた場合
⑤損失填補に充てる場合

減少する資本金額

①は、社員が会社から出資の払戻しを受け出資者でなくなる場合ですが、既に受けた出資を返還しますので、退社する社員が出資した時に資本金に計上した資本金と同額の資本金が減ることになります。

退社する社員の出資額が100万円で、内訳を資本金60万円、資本剰余金40万円としていた場合は、退社により100万円を払い戻しますが、減少する資本金は60万円となります。

株式会社では、出資者が会社に払い戻しを請求すると、自己株式の買い取りになり、会社財産が社外流出する点においては同じですが、出資者が減っても資本金は減少しません。

②は、社員に出資の一部を払い戻すことで、社員としての地位は継続することになりますが、出資の一部を払い戻すため、払い戻しをする金額の範囲内で、資本金から減らすべきと定めた額(当該社員の出資時に資本金の額に計上した金額以下に限ります)だけ資本金が減少します。

払い戻しをする社員の出資が100万円、出資時の内訳を資本金60万円、資本剰余金40万円としていた場合で、払い戻し額が70万円の場合、減少させる資本金は60万円までの範囲で決めることができます。

③は、資産計上していた債権額の範囲内で資本金が計上されていたため、当該債権の取り崩しにより、債権計上時に資本金計上された金額だけ資本金が減少します。

100万円の債権を資産計上し、出資の内訳を資本金60万円、資本剰余金40万円としていた場合、100万円の債権の資産計上の取り止めにより60万円の資本金が減少することになります。

④は、減資のことですが、資本剰余金へ振り替える額だけ資本金が減少します。

⑤は、持分会社が資本金の額の範囲内で損失の填補に充てると定めた額だけ資本金が減少します。

資本金減少による債権者保護手続き

持分会社の中でも、合名会社、合資会社には無限責任社員がいるため、会社の財産がなくなり債務の支払いができなくなっても無限責任社員が個人財産をもってしても連帯して責任を取ってくれることになっているため、減資する場合でも株式会社のような厳しい債権者保護手続きが定められていません。

そのため、合名会社、合資会社では「資本金を減らす」と社員が決めれば、それだけで資本金を減らすことができます。

一方、合同会社の出資者は、全員が有限責任社員ですので、資本金の減少は会社債権者の利益を害することになりかねないため、資本金の減少には、債権者保護の手続きとして株式会社に似た手続きが必要です。

合同会社の減資に対する債権者保護手続きの詳細はこちら

スポンサーリンク


資本剰余金の増加

資本剰余金が増加する場合

持分会社の資本剰余金が増加する場合として、会社計算規則31条1項に以下の5つのパターンが挙げられています(吸収合併、吸収分割及び株式交換による場合を除く)。

①社員が持分会社に出資した場合
②持分会社が社員に出資の履行を請求することができる権利を資産計上した場合
③資本金の全部または一部を資本剰余金とするとした場合
④損失の填補に充てる場合
⑤①~④の他、資本剰余金の額を増加させることが適切な場合

①、②は既存社員の出資だけでなく、新たに社員となるものが加入する場合も含まれます。持分会社で新たに社員が加入した場合は、当該社員が無限責任社員で労務や信用を出資としない限り、資本剰余金は増加します。

増加する資本剰余金額

増加する資本剰余金額は、
①の場合は、払込み又は給付財産から出資を受けるために要した費用のうち資本金又は資本剰余金から減額すべきとした額を控除した金額の範囲内のうち資本金としなかった金額
②の場合は、資産計上した権利の額のうち資本金としなかった金額
③の場合は、資本金から資本剰余金とするとした金額
④の場合は、資本金の範囲内で損失の填補に充てるとした金額
となります。(会社計算規則31条1項)

④の損失填補のために資本剰余金が増加する理由は、損失填補のための資本金減少には、資本金とマイナスの利益剰余金を直接相殺できないため、資本金から資本剰余金へ一度損失填補金額を振り替え、その後に資本剰余金と損失額を相殺する処理となるため一時的に資本剰余金が増加するからす。

(仕訳例)
(借) 資本金 100万円 (貸) その他資本剰余金 100万円
その他資本剰余金 100万円 その他利益剰余金 100万円

スポンサーリンク


資本剰余金の減少

資本剰余金が減少する場合

持分会社の資本剰余金が減少する場合として、会社計算規則31条2項に以下の6つのパターンが挙げられています(吸収合併、吸収分割及び株式交換による場合を除く)。

①持分会社が退社する社員に対して持分の払戻しをする場合
②持分会社が社員に対して出資の払戻しをする場合
③持分会社(合同会社を除く)が資産計上している出資者に対する出資の履行請求債権を資産計上しないこととした場合
④持分会社(合同会社を除く)が資本剰余金の全部又は一部を資本金とすると定めた場合
⑤持分会社が組織変更する場合、組織変更直前に持分会社が社員に対し出資の履行を請求できる権利を資産計上していた場合は、組織変更直前に当該債権を資産計上しないこととみなされます(会社計算規則9条)が、合同会社が社員に対する出資履行の請求権を資産計上していた場合で、組織変更をすることにより会社計算規則9条が適用され、出資履行の請求権を資産計上しないものとみなされる場合
⑥①~⑤以外で資本剰余金を減少させることが適切な場合

なお、持分会社においては、利益配当による資本剰余金の減少はありません。(会社計算規則9条2項但し書き)
すなわち持分会社における配当は、利益剰余金からの配当に限られ、資本剰余金からの配当は、「出資の払戻し」、または、「持分の払戻し」の規定で行われます。

減少する資本剰余金額

①は、社員が出資の払戻しを受け社員(出資者)でなくなる場合ですが、持分会社は既に受けた出資を返還しますので、退社する社員が出資した時に資本剰余金に計上した金額と同額の資本剰余金が減ることになります。

退社する社員の出資額が200万円で、出資時の内訳を資本金120万円、資本剰余金80万円としていた場合は、退社により200万円を払い戻しますが、減少する資本剰余金は80万円となります。

②は、社員に出資の一部を払い戻すことで、社員の地位は継続することになりますが、出資の一部を払い戻すため、払い戻し金額から払い戻しにより減少する資本金を控除した額だけ資本剰余金が減少します。

払い戻しをする社員の出資が200万円、出資時の内訳を資本金120万円、資本剰余金80万円としていた場合で、払い戻し額が80万円の場合、減少させる資本金が50万円の場合、減少する資本剰余金は30万円となります。

③は、資産計上していた債権額の範囲内で資本金、資本剰余金が計上されていたため、当該債権の取り崩しにより、当該債権計上額から資本金計上された金額を控除した額の資本剰余金が減少します。

200万円の債権を資産計上し、出資の内訳を資本金120万円、資本剰余金80万円としていた場合、200万円の債権の資産計上の取り止めにより80万円の資本剰余金が減少することになります。

④は、増資のことですが、資本金へ振り替える額だけ資本剰余金が減少します。

⑤は、③と同じになります。

スポンサーリンク


利益剰余金の増加

利益剰余金が増加する場合

持分会社の利益剰余金が増加する場合として、会社計算規則32条1項に以下の3つのパターンが挙げられています(吸収合併、吸収分割及び株式交換による場合を除く)。

① 当期純利益が発生した場合
② 退社する社員に持分の払戻しをする場合
③ ①、②以外で利益剰余金を増加させることが適当な場合

増加する利益剰余金額

増加する利益剰余金額は、
①の場合は、当期純利益金額
②の場合は、退社する社員に払い戻した財産の帳簿価額から、退社する社員の出資時に計上した資本金および資本剰余金の合計額を控除した金額。ただし、ゼロ未満の場合はゼロ
③の場合は、適当とされた利益剰余金額
となります。(会社計算規則32条1項)

②を具体的にいうと、払い戻し財産の帳簿価額が100万円で、退社する社員の持分として資本金50万円、資本剰余金40万円が計上されている場合、増加する利益剰余金は10万円(100万円-(50万円+40万円))となります。

また、払い戻し財産の帳簿価額が100万円で、退社する社員の持分として資本金70万円、資本剰余金40万円が計上されている場合、増加する利益剰余金はゼロ円(100万円-(70万円+40万円)=マイナス10万円。よってゼロ)となります。

利益剰余金が減少する場合

持分会社の利益剰余金が減少する場合として、会社計算規則32条2項に以下の4つのパターンが挙げられています(吸収合併、吸収分割及び株式交換による場合を除く)。

① 当期純損失となった場合
② 退社する社員に持分の払戻しをする場合
③ 社員が出資の履行をする場合
④ ①~③以外で、利益剰余金の額を減少させることが適切な場合

なお、出資の払戻しにより財産を払い戻した場合、財産の帳簿価額に相当する額を利益剰余金から控除することはありません。(会社計算規則32条2項但し書き)

すなわち、出資の払戻しは利益配当ではありませんので利益剰余金が減少することはありません。

スポンサーリンク