相続放棄が認められない、相続放棄ができない場合、却下される場合・事例

相続放棄が認められない、相続放棄ができない場合

相続放棄は、他の相続人と協議したり、共同で手続きする必要がなく、相続放棄する人が単独でできます。

しかし、いつでもどのような状況でも相続放棄できるとすれば、いつまでも相続人が確定せず債権者など利害関係人の利益を不安定にしてしまいます。

そこで、一定の条件が成立した場合には、相続放棄ができないこととされています。

また、相続放棄には家庭裁判所への相続放棄申述書の提出が必要で、裁判所は受理できない特別な事情が無い限り受理してくれますが、要件を欠いていることが明白な場合、申述が却下されます。

相続放棄申述書が家庭裁判所に受理されない限り相続放棄はできません。

ここでは、相続放棄がスムーズに行えるよう、相続放棄が認められないのはどのような場合なのか、相続放棄申述書が却下されるのはどのような理由・事例なのか、受理されない時の対処法を紹介します。

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■生前の相続放棄

被相続人が亡くなる前の相続放棄はできません。

被相続人に多額の借金があり、生前に相続放棄しておきたいと思っても、相続発生前の相続放棄はできません。

そもそも、相続放棄は家庭裁判所への相続放棄申述書の提出が必要ですが、生前に相続放棄申述書を提出しても受け付けてくれません。

■単純承認をした場合

一度単純承認をしてしまうと、その後は、原則として相続放棄をすることはできません。

相続人が被相続人の財産を承継する意思表示をすれば、単純承認となります。

また、単純承認の意思表示をしなかった場合でも、相続放棄・限定承認等の何ら手続きをしなかった場合や相続財産の処分、背信行為をした場合も単純承認したものとみなされます(民法921条)。

これを法定単承認といいます。

◇法定単純承認とみなされるケース(民法921条)

(1)相続財産の処分

被相続人の死亡後に、相続人が相続したことを知りながら預貯金を使った場合や、一部の財産を売却した場合など相続財産の全部、または一部を処分(売却・譲渡、廃棄など)したときは、単純承認したものとみなされます。

よって、被相続人の死亡、それによる相続の開始を知らずに、被相続人の死亡後に相続財産を処分しても、相続放棄は可能と考えられます。

また相続人が、相続財産の全部または一部を処分した場合でも、その処分が返済期限の到来した債務の弁済など相続財産の保存行為や民法602条に定める期間を超えない賃貸にあたる場合は処分行為に該当しません(民法921条1項但書)。

なお葬儀費用を被相続人の預貯金などから払った場合については判例でも、被相続人の人間関係や社会的地位などから考えて一般的に適切な範囲と認められる金額であれば、法定単純承認には該当しないとされています。
さらに仏壇や墓石の購入費用についても、社会的にみて不相当に高額でなければ被相続人の預貯金などから払っても単純承認には該当しないとされています。

ただし、葬儀費用等の範囲や金額は明確でありません。葬儀費用を支払うことで債務が返済できなくなるほど債務が多いなど、相続財産を使うことでトラブルになる可能性があると思われる場合は慎重な対応が必要です。

(2)限定承認や相続放棄をしなかったとき

被相続人が死亡したこと及びこれによって自分が法律上の相続人となった事実を知った時から3か月以内(熟慮期間)に、限定承認または相続放棄をしなかった場合、単純承認をしたものとみなされます。

被相続人が親や配偶者であれば、被相続人の死亡を知った時が、自分が法律上の相続人となったことを知った時になりますが、先順位の相続人が相続放棄し、後順位の相続人に相続権が移った場合は、自分が法律上の相続人となったことを知った時は、被相続人の死亡を知った時ではなく、先順位の相続人の相続放棄により自分に相続権が移ったことを知った時になります。

また、被相続人に債務が無いと信じて限定承認や相続放棄しなかったが、相続後に多額の債務のあることが判明した場合など、特別な事情がある場合は3か月の熟慮期間の起算点が後に繰り延べられます。

(3)背信行為をした場合

相続人は、限定承認または相続放棄をした後であっても、次のような背信行為をした場合は、限定承認や相続放棄は認められず、単純承認したものとみなされます。

①被相続人の債権者に対して、相続財産の所在が分からないようにした場合
②被相続人の債権者に不利益を与える意思で相続財産を使用した場合
③被相続人の債権者を害する意思で、家庭裁判所に提出する相続財産目録に、相続財産の全部または一部を記載しなかった場合(プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産を記載しなかった場合も含むと解されています。また、うっかり記載を忘れてしまった場合まで法定単純承認とみなされるわけではないとされています。)

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■相続放棄が裁判所に認められない(相続続放棄の申述書が受理されない・却下される)理由・事例

相続放棄をするには、家庭裁判所への相続放棄申述書の提出が必要です。

家庭裁判所は、相続続放棄申述書に受理できない理由がない限り、基本的に受理してくれますが、書類の不備・不足など受理の要件を欠いていることが明らかな場合、申述が却下されることがあります。

家庭裁判所に相続放棄申述書が受理されない限り相続放棄はできません。

家庭裁判所に相続続放棄申述書が受理されない・却下される原因には次のようなことがあります。

(1)相続放棄の申述人が相続人でない場合

相続放棄は、原則として相続人本人が申述する必要があります。
相続人が未成年者や成年被後見人の場合は、親権者や後見人といった法定代理人がします。

ただし、未成年者や成年被後見人と法定代理人が共同相続人で、両者の利害が対立する場合(未成年者や成年被後見人が相続放棄すると、法定代理人の相続分が増えるような場合)や未成年者や成年被後見人の共同相続人間で利害が対立する場合(1人の未成年者の相続放棄により、他の未成年者の相続分が増えるような場合)は、法定代理人は代理権を行使することができません。
この場合、家庭裁判所に対し法定代理人に代わる特別代理人選任の申立てを行い、特別代理人に相続放棄の代理申請をしてもらいます。

なお、成年被後見人と後見人がともに相続放棄し、両者の利害が対立する場合で、後見監督人として第三者が選任されているときは、後見監督人が相続放棄の申立てを行うことができますので、特別代理人の選任は不要です。

また、法定代理人が相続放棄する場合や未成年者や成年被後見人と法定代理人が同時に相続放棄する場合は、未成年者や成年被後見人と法定代理人の利害は対立しませんので法定代理人が未成年者や成年被後見人の代理で相続放棄申述書を提出できます。

(2)相続放棄に必要な書類の不足・不備
相続放棄に必要な書類には「相続放棄の申述書」「被相続人の住民票除票又は戸籍附票」「申述人(放棄する方)の戸籍謄本」「被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」等がありますが、相続放棄する人により提出書類が異なります(裁判所 相続の放棄の申述に必要な書類)。

提出が必要とされている書類が不足していたり、相続放棄の申述書の記載内容に不備があると相続続放棄の申述は受理されません。

(3)相続放棄の期限が過ぎている場合

自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月を超えて相続放棄を申述しても、相続放棄は却下されます。

相続放棄はいつからいつまでできる?生前に相続放棄できる?相続放棄ができる期間

(4)法定単純承認が成立していた場合

法定単純承認が成立していた場合、相続放棄はできませんので相続放棄は却下されます。

◇法定単純承認とみなされるケース(民法921条)

・相続放棄が裁判所に認められない、却下された時の対処法

一度相続放棄が却下されると、再度相続放棄の手続きをやり直すことはできません。

家庭裁判所の審判に不服がある場合、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に高等裁判所に即時抗告(※)を申立て、再度審理してもらう必要があります。

※抗告とは、裁判所の決定や命令に対する不服を上級の裁判所に申し立てることをいいます。

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